What's Bossa Nova
「ギターとアンサンブル ボサノヴァ・フルート アドリブ入門」大久保はるか著(中央アート出版社)より抜粋文を掲載.
1.ボサノヴァについて

ボサノヴァ〔Bossa Nova〕はブラジル・ポルトガル語で「新しい感覚」といった意味で、ブラジルのサンバ、サンバカンソン(サンバのバラード)などのリズムと、ジャズやクラシックのハーモニー感覚がミックスされて生まれました。1958年、『想いあふれて(Chega De Saudade)』(A.C.ジョビン作曲)のブラジル国内での大ヒットがきっかけで広まっていったといわれています。ジョアン・ジルベルト(1931〜)のささやくような歌唱法と独特なスイング感のあるギター奏法は当時の若者達から大きな支持を得ました。
 その後、フランス映画『黒いオルフェ』(1959年、音楽担当A.C.ジョビン&ルイス・ボンファ)やアストラッド・ジルベルト(1940〜)が英語で歌う『イパネマの娘(Garota De Ipanema)』(A.C.ジョビン作曲)の大ヒット、スタン・ゲッツなどジャズ奏者によってアメリカを中心に紹介され大ヒット、などの事がらによって、よりワールド・シェアな音楽へと発展してきました。
 また近年の日本においては、「カフェ・ミュージック」としての人気も高まり、いたる所で耳にすることができるほどに普及してきています。
2.ボサノヴァのリズムの不思議とボサノヴァ・ギター

ボサノヴァの魅力のひとつは、ギターが支える一種独特な浮遊感のある不思議なリズムにあるとも言えます。そこで次にジョアン・ジルベルトがブラジルのサンバからヒントを得て自身のギター奏法に応用したとされるボサノヴァ・ギター奏法の基本ラインに着目し、そのリズムの不思議について探ってみましょう。
 ボサノヴァ・ギターは、ブラジルのサンバの影響を強く受けています。一見全く別の音楽のようにも見受けられるサンバとボサノヴァ。一体どこに共通点があるのでしょうか。
 サンバの演奏で欠かすことのできない楽器として、スルド、タンボリン、ガンザの3種の打楽器があります。各楽器の代表的なリズムパターンの1種を記します。
そして『Garota De Ipanema(イパネマの娘)』のギターによるイントロ部分と比べてみましょう。

 リズム面から見ると4分音符で奏される低音部(譜例の場合F,G♭音)はスルドのパートを表し、それらベース音以外の和音はタンボリン(時にガンザ)パートをまかなっているのです。
 このような視点からボサノヴァという音楽をとらえ直してみるのも一つの方法かもしれません。
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